凛とした
<凛とした> 素晴らしい短編集でした。
読み終えた途端、端正でも、清々しさでも言い足りなくて、思いついた言葉が <凛とした> でした。
りりしく引き締まった文章に、雰囲気やオーラが込められた見事さは思わず溜息が漏れるほどで、「自分も、死ぬまでに一度でいいから、こんな文章を書いてみたい」 と素人が勘違いで嫉妬じみた感想を抱くほど
例えば、”雪に埋もれた小路を歩いていくと、いつになく確かな幸先が心を軽くしていく。逃れようのない虚しさの裏に無上の喜びが貼りついている。薄い陽射しの朝で、町は足下から冷えていたが、やがて娘を迎える雪たちは道という道の木立に美しい華をつけていた。” と描かれた「冬の華」の末尾などは、ストーリー全体を知らなくとも、主人公のきりりとした風情、ひたむきな生き方が、風景と一体となって心に迫ってきて、美しさに泣きたくなってしまう。
決して常に品行方正であるわけでもなく、しかし、己に正直で筋の一本通った言行、もしかしたら、現代に最も失われたものが <凛とした> という言葉に含まれているのかもしれない なんてちょっと思ったりしました。
そんなことを考えながら、今度は、届いたばかりのメジューエワのCDを掛けてみたら、このベートーベンがまた <凛とした> としか言い表せない見事な演奏でした。
彼女は、その清純な容姿から、どちらかと言えば、線の細い、楚々としたピアノを想像してしまいがちですが、実は、かなり強靭で安定感のある演奏が持味だと思います。
そういう意味では、確かに、かなり期待していたCDではあったのですが、この「ワルトシュタイン」は素晴らしい。 彼女の数あるCDのベストワンではないでしょうか
その堂々とした品格のある演奏は、やはり <凛とした> と称すべき確かさを備えていました。
滅多にない <凛とした> 作品2点、”いいものはいい” を実感できる特上の作品です。
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